抽象論ノートとは、
理系教科の演習をひと通り終えたあとに、
それまでの思考を体系化し直すためのノートです。
問題集や参考書を解いていると、
知識や解法はどうしても断片的なまま蓄積されていきます。
抽象論ノートは、こうして散らばった知識を順序立て、
体系として整理し直すための場所です。
§1 なぜ体系化が必要なのか
理系の問題を解く力とは、
長い問題文を小さなブロックに切り分ける力、
いわゆるチャンク化のことです。
たとえば「A=Bを示したいときに」
で始まる数行が頭の中で
ひとまとまりのパーツとして認識できていれば、
脳のキャパシティを他の部分の思考に回せます。
このチャンク化をどのレベルで行えているかが、
そのまま数学力・理系科目の実力として現れます。
フォーカスゴールドのような問題集で
同じ問題しか解けない状態は、
裏を返せばチャンク化の抽象度が低いままだということです。
演習のときは常に
「この問題文はどんなチャンクに切り分けられるか」
を考えながら解き、
間違えたときは
「この一問からどんなチャンクを抽出できるか」
を考えながら直します。
理系教科は基本この頭の使い方が土台になっています。
§2 ノートの本質
ポイントは、断片的な解法や知識を
一つひとつバラバラに扱うのではなく、
同じラベルの下に集め、
並列・順序の関係として整理することです。
表面上は違って見える問題でも、
根っこにあるチャンクは共通していることがあり、
整理していくと手持ちの武器は
それほど多くなくていいと気づきます。
これができると、次の状態に近づきます。
| Before | After |
|---|---|
| 問題ごとにバラバラな解法を暗記 | 使う解法の数が意外なほど少ないと気づく |
| どの解法を使うか毎回迷う | 「この条件ならこの手法」と合理的に選択できる |
| 一冊丸ごと復習しないと不安 | テスト前はノート1冊の見直しで済む |
§3 作り方
抽象論ノートは、
新しいことを覚えるためのノートではなく、
すでに持っている知識を組み替えるためのノートです。
手順は次の3つです。
1.素材は既存の問題集・参考書。
新しいネタを探すのではなく、
「解いたことがあるが、
解法の必然性を理解しきれていない問題」
を整理していく。
整理したのちに、
目で解ける、見た瞬間に解法が浮かぶ段階
まで習熟させる。
2.同一ラベルで括る。
同じテーマ・同じ発想の解法を集め、
並列(条件次第でどちらか)か
順序(この手順のあとにこの手順)かを整理する。
バラバラだった経験がここで一つの体系にまとまる
3.定期的に見直す。
作って終わりにせず、
他の演習で間違えたときの復習先として使い、
修正・アップデートを続ける
§4 良いノートの判断基準
ノート作成が成績につながっているかどうかは、
次の5つの基準で確認できます。
| 基準 |
|---|
| ①ノート作成の過程が、思考の整理そのものになっている |
| ②たまにでも見直され、修正・アップデートされる |
| ③問題集の一問一問のあいだにつながりができている |
| ④ベースにした問題は、見た瞬間に解法が浮かぶ段階にする |
| ⑤他の演習で間違えたときの復習先が、このノートになっている |
この基準を満たしていればノートは体系として機能しています。
逆に、作ること自体が目的化していたり、
一度作って終わりになっていたりする場合は、
時間をかけている割に成果につながりにくい状態です。
§5実例:実際の抽象論ノートより
受験期に実際に作っていたノートの抜粋です。
手書きの走り書きも多いですが、
それぞれ「何が同じラベルの下に集められているか」
に注目して見てみてください。
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数学

1の立方根ωについて、定義・性質式・図形イメージ・計算上の注意点を一枚に集約。「ωが出てきたら見る一枚」として同一ラベルの下に情報を集めている。

体積計算の手順を、外側−内側→長方形近似→バームクーヘン評価→極限→積分という順序チャンクとして整理。個々の数値ではなく手順そのものを抜き出している。

Σ・∫・limという別々の単元の記号を「1文字ずつしか計算できない」という共通性質で同一ラベル化。見た目でなく扱い方の構造でグループ化する例。

対偶を使う、結論から逆算するなど、特定の問題に紐づかない汎用的な証明技法を並列にリスト化。個別の演習で得た気づきを問題から切り離して一般化している。
その他、分野に関係なく、演習中に気付いたものなどを順番にストックしている。
化学



構造決定の手がかりを「情報の種類」「分子式からの暗黙情報」「記入前の最終チェック」という階層に抽象化。

滴定曲線と各pKでの構造変化(A⁺⇔A±⇔A⁻)を図として一体化し、視覚的なチャンクとして記憶する工夫。
物理

球殻の電場問題を「貫通」「電荷に囲まれると電場0」「静電遮蔽」の3パターンに分類し並列整理。設定が違ってもどの分類に当たるかで判断できる。
§6 まとめノートがあると何が変わるか
抽象論ノートが仕上がっていると、
テスト前の見直しが格段に楽になります。
問題集を一冊丸ごと復習し直す必要がなくなり、
体系化されたチャンクと選択基準を確認するだけで、
手持ちの武器と使い方を思い出せるようになるからです。
ただし、抽象論ノートを作ったからといって、
それだけで合格が保証されるわけではありません。
演習と体系化のバランスを取りながら進めていきましょう。
まずは1単元、たとえば得意な範囲や逆に苦手な範囲から、
既存の問題集を見返して同一ラベルで括れそうな知識
を探すところから始めてみてもいいかもしれません。

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